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平成30年第2回定例会

平成30年第2回定例会一般質問

 

◆しもむら緑 質問

 

墨田区議会自由民主党のしもむら緑でございます。通告してあります大要2点につき、山本区長及び加藤教育長の明確で前向きなご答弁をよろしくお願いいたします。

 まず、大要1点目は、墨田区の災害医療について伺います。

 災害医療は、地震、洪水、火災、テロ等のケースでは対応が異なりますが、今回は、地震に特化して伺います。

 大地震が発生した場合、軽症・重症を問わず、多くの傷病者が病院に殺到し、必要な方に適切な医療を提供できなくなるおそれがあることから、現在、各自治体では、災害医療救護体制の整備が進められています。初動医療体制で非常に重要となってくるものがトリアージです。トリアージとは、限られた医療資源を最大限に活用し、救助可能な傷病者を確実に救い、できる限り多くの傷病者の治療を行うために、それぞれの重症度や緊急性に応じて治療優先度を決める行為です。具体的には、4区分に分類し、4色に識別されたトリアージタッグと呼ばれるものを付けていきます。

 本区においては、大地震発生時から72時間以内までは、七つの病院、東京曳舟病院、同愛記念病院、墨田中央病院、東京都済生会向島病院、中村病院、賛育会病院、山田記念病院でトリアージポストが設置され、重症度と緊急性に応じた救護が行われる計画となっています。トリアージで軽症と診断された方は、医療救護所という別に定められた7カ所の場所で手当てを受けることになります。また、この七つの病院以外での直接の傷病者の受入れは行われません。

 災害拠点病院としては、東京曳舟病院、都立墨東病院が指定されていますが、墨東病院は、墨田区、江東区、江戸川区の特に重症度と緊急性の高い方のみ行政を介して受け入れられることとなっています。

 そこで、区民の皆様に一日も早く一般的になじみの少ないトリアージという概念となぜそれを行うのかという丁寧な説明、そして緊急医療救護所の周知徹底を行っていただくことを要望します。例えば区報、区のホームページ、町会の回覧板、防災拠点会議、総合防災訓練及びすみだ安全・安心メール等でお知らせを周知する方法はいかがでしょうか。ほかにも実際、災害現場でトリアージに当たられる墨田区医師会、向島・本所両歯科医師会、墨田区薬剤師会、柔道整復師会墨田支部の皆様の協力も仰ぎ、院内等で患者様に情報提供していただく方法も有効だと思います。

 大地震が起き、けがをすれば、基本的にはどこでもよいから近くの病院へ行くか、かかりつけの病院に行くものと考えられますし、経験したことのない状況下での不安から、一刻も早く誰よりも先に治療を行ってほしいと考える方も多数いらっしゃることが考えられます。カルネアデスの板となるような事態は絶対に避けなければなりません。区民の目線に立って、非常事態に備え、日ごろより理解を得られるように努めることが多数の傷病者を助ける結果につながっていくと思います。区長の所見を伺います。

 また、トリアージポスト設置病院の一つの賛育会病院は、建物の老朽化から5年後に旧立花中学校跡地への移転が予定されています。その場合、南部にトリアージポスト設置病院が2カ所のみとなってしまいます。当然ながら行政地域での判別は不可能であり、墨田区民以外の方も受入れを行う形となります。このことからも、墨田区のみで災害対策を考えるのではなく、しっかりとした広域連携の確立は必要不可欠です。このことに加え、近隣区の災害時に受入れを行う計画の病院の情報も収集して、是非区民の皆様に提供していただきたいと考えますが、区長の所見を伺います。

 続いて、トリアージポスト設置病院同士の連携と災害医療の現場を経験した方々のヒアリングについて伺います。

 先月の26日、同愛記念病院にて区内で初めて関係団体がそろって災害対策訓練が行われました。訓練を見学させていただいた率直な意見としては、都立墨東病院に次ぐ規模を誇る同愛記念病院には、災害時の拠点になっていただきたいと強く感じました。

 また、墨田区の災害医療に対する取組は、東京都福祉保健局区市町村災害医療コーディネーター研修会にて先駆的なモデル自治体として取り上げられていることも仄聞し、大変うれしく感じました。改めて関係者の皆様には、深く感謝を申し上げます。

 今回は、これをさらに一歩進めた提案をさせていただきたいと思います。トリアージの訓練は、関係団体により個々にこれまでも何度も実施はされてきましたが、トリアージポスト設置病院同士の連携や東日本大震災などで災害医療の現場を経験した方々からのヒアリングがまだ一度も行われていません。本区におけるトリアージポスト設置病院では、外科を強みとする病院もあれば、内科を強みとする病院もあります。また、それぞれ規模も違います。そのことにより備蓄品の内容も異なっていると予想されます。

 例えば、東日本大震災で災害拠点病院となっていた気仙沼市立病院が抱えた問題点として、病院の耐震性、電力・水・食料の確保といった備蓄物資の枯渇、通信手段の復旧の遅れ、ヘリポートの確保、職員のレスパイトが報告されています。トリアージポスト設置病院の関係者の皆様と災害医療の現場を経験した皆様と話し合うことで、災害時に特に必要であったものや注意点等、さまざまな課題が浮き彫りになってくると考えますので、是非その機会の設置を強く要望します。

 併せて、妊婦の方や要援護者への対応も考えていただきたいと思います。東日本大震災などの教訓を踏まえての区長の所見を伺います。

 この質問の最後に、陸路が絶たれた場合の傷病者の搬送手段や対応について伺います。

 交通機関は、確実に麻痺します。その際、以前にも定例会一般質問で指摘しましたが、ヘリコプターや船の活用が大変有効と考えられます。

 まず、ヘリコプターについてです。災害拠点病院に指定されている都立墨東病院は、屋上にヘリポートがありますが、東京曳舟病院の医療機関近接ヘリコプター緊急離着陸場は、東墨田運動場となっています。現実問題として、陸路が絶たれていることをあらかじめ想定して、そこに搬送するまでの方法も考えておく必要があります。その点について現状どうお考えでしょうか。

 そのほか、緊急時に備えてヘリコプターが緊急離着陸できる候補場所も検討しておく必要があると考えます。電柱や高圧線、ビル等を避け、さらに進入角度を考えた場合、都心では候補地を探すのが非常に難しいのが現状ですが、それでも検討は必要です。区長は先日、沖山前議長と墨田区医師会の皆様とともに、東京消防庁のヘリコプターに乗って、災害対策の視点から墨田区の上空を視察されたと仄聞しています。実際の目で見られ、どのような感想を持たれたのか、区長ご自身の率直なご意見を伺います。加えて、救急車や消防車を23区独自で持っていないことに関しても災害対策時の課題として何か言及されたのか伺います。

 また、日ごろより自衛隊の方々と関係を密にしておくのもよいと思います。自衛隊ヘリや自己完結型の医療チームを持っている自衛隊の方々の災害派遣での活躍ぶりは広く知られているところです。葛飾区では、災害医療に関してではありませんが、自衛隊の方々と協力した総合防災訓練が行われています。今年は、自衛隊の方々による炊き出し訓練のほか、川に臨時の橋を架ける訓練も行われるとのことです。荒川区、板橋区、足立区及び品川区の区役所には、退職した自衛官が防災・危機管理担当として活躍されています。このような常日ごろからの関係構築が、いざ災害が発生したときに生きてくると思います。区長の所見を伺います。

 次に、船の活用に関しては、現在、東京都の水辺ラインと協定を結んでいますが、ほかの自治体も同様に協定を結んでいる状況です。品川区は、区独自で屋形船を運営している民間企業と災害協力協定を結びました。墨田区としても先月12日に墨田緊急用船着き場の竣工式も行われましたが、河川に面したトリアージポスト設置病院もありますので、傷病者の搬送ということだけではなく、緊急物資を運ぶなどの用途から、区独自で船舶の運営を行っている民間企業と協力協定を結ぶべきと考えます。区長の見解を伺い、大要1点目の質問を終わります。

 大要2点目は、区立の学校における感染症予防対策について伺います。

 感染症の予防等を行うため、学校保健安全法施行規則第8条第3項の規定により、進学・転学の際には、進学・転学先へ健康診断票を校長に送付することとされていますが、海外の現地校からの転入の場合は関係書類の送付がないこともあるため、保護者からの聞き取りなどで十分な情報を得るとともに、状況によっては、学校医による健康診断の実施も必要であると日本学校保健会から指摘されています。しかしながら、必ず義務付けられているわけではありません。例えば結核については、高蔓延国での居住歴のある児童・生徒の場合、入学時又は転学時の一回精密検査の対象とされていますが、強制ではありません。当然、児童・生徒が差別・偏見の対象になることがないように十分配慮しつつ、危機管理の観点から、保護者への入念な聞き取りや入学前に健康診断や精密検査を積極的に促す等行っていただきたいと思いますが、加藤教育長のご所見を伺います。

 日本では発生していない感染症が海外では流行していることもあります。検疫所も基本は自己申告であるため、注意は絶対に必要です。現実に沖縄県でのはしか・麻しん感染拡大が社会問題となったことは記憶に新しいことと思います。区役所の窓口において海外で居住されていた方から転入届等の書類が出された際、教育委員会や保健衛生担当に情報提供し、適切な対応をアドバイスするなど、異なる所管同士の連携で未然に感染症を予防することもできると考えます。子どもたちの健康への安全、そして安心をどう図るかはとても重要です。この課題は、プライバシーの問題と社会全体の安全・安心がぶつかり合う公共の福祉による人権の制限という非常に基準の困難な判断を伴いますが、不測の事態が出る可能性が著しいと認められれば決断し、積極的に対策をとるべきです。山本区長、加藤教育長にそれぞれの立場からの所見を伺い、私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

 

◆山本亨区長 答弁 

 

    ただいまの自由民主党、しもむら議員のご質問に順次お答えします。

 最初のご質問は、墨田区の災害医療についてです。

 まず、トリアージという概念やその説明、緊急医療救護所の区民への周知徹底です。

 ご指摘のとおり、区では5月26日に同愛記念病院で実践的な災害対応訓練を医師会をはじめとする各関係団体とともに実施し、災害時の医療救護活動の課題抽出を行ったところです。

 この訓練を生かし、災害医療現場に混乱が生じないよう、トリアージの仕組みや緊急医療救護所の役割について、区報や防災活動拠点会議等、さまざまな機会を捉えて周知を図ります。

 また、院内での情報提供も有効なことから、墨田区医師会等、関係機関の協力を得られるよう協議していきます。

 次に、南部地域のトリアージポスト設置病院については、病院の移転に伴い、区民の皆さんが不安を抱かないよう、広域で連携しながら情報提供していきます。

 次に、二次救急病院同士の連携や災害医療の現場を経験した方々へのヒアリングについてです。

 大規模災害時に区内の病院は、災害拠点病院、災害拠点連携病院、災害医療支援病院のそれぞれ役割が異なるほか、災害時の被害状況も地域差が生じる可能性があります。そうしたことを踏まえ、医療救護活動拠点となる区役所と病院がスムーズに連携していきます。

 また、災害医療の現場を経験した方々の知識や経験は大変貴重ですので、経験者へのヒアリングに努めます。その際には、妊婦の方や災害弱者への対応も含め検討し、災害時に病院や医師会等、医療救護関係者と情報を共有しながら、的確かつ迅速に運営ができるよう連携を図ります。

 次に、陸路が絶たれた場合の傷病者の搬送手段や対応についてです。

 東京曳舟病院から東墨田運動場までの搬送等については、国や都、防災関係機関、防災協定締結団体等との連携により、道路啓開等さまざまな手法を活用し、確実に対応していきます。

 また、ヘリコプターが緊急離着陸できる候補場所の検討については、今年度、都が災害時のヘリコプター臨時離着陸場の候補地を調査する予定ですので、都と連携し、適地の確保に努めます。

 また、東京消防庁のヘリコプターによる視察についてですが、上空から区内を見て、改めて木造密集地域等の災害対策の必要性を認識しました。

 なお、救急車等の23区独自所有については、私から特に言及はしていません。

 さらに、自衛隊との関係強化についてですが、既に総合防災訓練をはじめとして連携を図っています。災害時の自衛隊の役割の重要性は認識していますので、引き続き連携強化に努めます。

 次に、舟運の活用ですが、水路の多い本区の特性上、被災者や物資の搬送に大変有効と考えられますので、東京都との連携の仕組みや民間企業との協定締結等、本区として有効な舟運活用方法について引き続き検討します。

 最後に、学校における感染症予防対策についてです。

 国内外での感染症の発生状況やその対応策については、適宜、保健所から関係所管や教育委員会に情報提供やアドバイスを行っています。状況によっては、対策会議を開催するなど、発生防止に向け、連携して対応しています。

 現状では、ご指摘のような転入児童・生徒個人を対象にした連携は行っていません。しかし、重篤な感染症が流行している国からの入国者の場合、検疫所から保健所が連絡を受け、一定期間、定期的な健康観察を行うなどの対応をすることがあります。その際、ご本人や保護者の了解のもと、関係所管や教育委員会と情報を共有し、連携して対応することも想定されます。

 不測の事態が想定される場合には、区民の安全と生命を守るため、個人のプライバシーに最大限配慮しつつ、必要な対策をとっていきます。

 以上で、自由民主党、しもむら議員の私へのご質問に対する答弁を終わります。

   

◆加藤裕之教育長 答弁

 

 自由民主党、しもむら議員のご質問にお答えします。

 幼児・児童・生徒が集団で生活する学校においては、感染症の予防及び拡大防止は、重要な課題となっています。学校では、日ごろから学級担任、養護教諭を中心として、幼児・児童・生徒の健康観察に努めるとともに、インフルエンザなどの感染症流行の時期などに文書等で保護者に対する注意喚起や予防対策への理解促進を図っているところです。

 また、集団感染が生じやすいプール学習の開始時期や移動教室、修学旅行などの宿泊行事前には、必ず健康診断を行い、感染症の兆候がないか確認を行っております。

 学校における児童・生徒の転入時の感染症の予防対策についてですが、海外からはもちろん、転居による本区への転入の諸手続の際、児童・生徒の就学・編入に関して、保護者が教育委員会まで事前相談に来ていただくことになります。

 そこでは、就学・編入に必要な諸手続の説明や、児童・生徒の健康状態をお聞きするとともに、義務付けはできませんが、学校医等への健康診断を就学・編入の前に受診していただくよう促しており、また就学・編入後は、定期健康診断や臨時健康診断等を行っています。今後とも差別や偏見の対象とならないよう配慮しながら、入念な聞き取りや必要性を理解してもらい、受診を促すよう、感染症予防対策を行っていきます。

 感染症が発生した場合は、大きな影響を及ぼしますので、保健所など庁内関係部署や学校医等との連携のもとで、必要に応じて学校の臨時休業を行う等対応し、児童・生徒が健康な状態で教育を受けるための学校環境維持に努めていきます。

 以上で、自由民主党、しもむら議員のご質問に対する答弁を終わります。

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